2015年06月22日
ペネトレイト・・・5
『やぁ。相原さん。どうしたんですか?』
『あ、いや。ここの人に用事がありまして・・・』
『知り合いですか?』
『いえ、あの~白井美恵さんって?』
『おたくの部長さんの娘。こいつにだまされてね。』
『だまされたって?』
『美恵を使って部長さんを脅してたんだよ。』
『この会社お宅の会社と関係あるでしょ?』
『えっ。この出会い系サイトが・・』
『知らないの?』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以前から会社はこのサイトを運用していたらしい。
会社はここでの収益を裏金として使用していたようだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私はその事を刑事から聞き、唖然としたが、妙に納得もしていた。
そう言えば民事再生後の説明会といい、計画案といい、規定よりずいぶん早い。
スピーディであるのはいいのだが、考えればいかにも計画倒産のようにも思える。
なぜ倒産させねばならなかったのか?
白井部長への脅迫と関係があるのではないか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
刑事がその男を連行していくのを後から見ていた。
階段を下りて行き車に乗せようとしている。
やじうまが集まってきた。
私は呆然とその“やじうま”を見ている。
その中のひとりが私を見ているのに気づいた。
私に正面を向いて凝視している・・・・・・・・女。
私と目が合ったとたん女は“にやり”と笑って歩き出した。
・・・・・・・あの“にやり”・・・・・・・・・・・・
私はまた恐怖を感じながらも、すぐに後を追った。
女の姿は何処にもない。
あきらめたとき道の向こう側の子供が私を見て“にやり”と笑った。
そして遠ざかるように歩き出す。
今度は信号待ちしている老人が人込みの中から私を見ている。
同じように“にやり”と笑い、ゆっくり歩き出した。
・・・・・“なんなんだ”・・・・・・・
『あ、いや。ここの人に用事がありまして・・・』
『知り合いですか?』
『いえ、あの~白井美恵さんって?』
『おたくの部長さんの娘。こいつにだまされてね。』
『だまされたって?』
『美恵を使って部長さんを脅してたんだよ。』
『この会社お宅の会社と関係あるでしょ?』
『えっ。この出会い系サイトが・・』
『知らないの?』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以前から会社はこのサイトを運用していたらしい。
会社はここでの収益を裏金として使用していたようだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私はその事を刑事から聞き、唖然としたが、妙に納得もしていた。
そう言えば民事再生後の説明会といい、計画案といい、規定よりずいぶん早い。
スピーディであるのはいいのだが、考えればいかにも計画倒産のようにも思える。
なぜ倒産させねばならなかったのか?
白井部長への脅迫と関係があるのではないか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
刑事がその男を連行していくのを後から見ていた。
階段を下りて行き車に乗せようとしている。
やじうまが集まってきた。
私は呆然とその“やじうま”を見ている。
その中のひとりが私を見ているのに気づいた。
私に正面を向いて凝視している・・・・・・・・女。
私と目が合ったとたん女は“にやり”と笑って歩き出した。
・・・・・・・あの“にやり”・・・・・・・・・・・・
私はまた恐怖を感じながらも、すぐに後を追った。
女の姿は何処にもない。
あきらめたとき道の向こう側の子供が私を見て“にやり”と笑った。
そして遠ざかるように歩き出す。
今度は信号待ちしている老人が人込みの中から私を見ている。
同じように“にやり”と笑い、ゆっくり歩き出した。
・・・・・“なんなんだ”・・・・・・・
Posted by タンクん at
18:31
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2015年06月23日
ペネトレイト・・・6
映画の中でこんなシーンを見たことがある。
“悪魔の戯れ” ・・・・でもこれは・・・・・・
映画のように、もしかしたら菜緒子は悪魔で、感染しているのか?
私は言い知れぬ恐怖を感じながら、家路についた。
結局あの男と話すことはできなかったが、刑事に聞いた話でなんとなく全体像がわかった。
わかったと言っても、民事再生と会社とサイト・白井部長の関係だけで、
私に起こっている出来事との関係はわかっていない。(会社のことだから関係ないわけではないのだが・・・)
民事再生申請する事でサイトと縁を切ろうとしたんだろう。
裏金がたまに会社に来ていた政治家との関係に使われていたに違いない。・・・よくある話だ・・・・
ただ、わからないのはその事と菜緒子の関係。
私の行く先には必ず菜緒子の陰がある。・・・・・菜緒子に操られているのか・・・・・・・・
そしてまた、私の行くところにあの刑事がいる。
これもどう言うことなのか?・・・・・偶然?それとも・・・・・・・・
道行くひと(全くの他人)のあの視線。そして“にやり”とする表情
白井恵美はなぜ“菜緒子”を恐れていたのか?
部長が知っている“菜緒子”は誰なのか?・・・・・・・・悪魔?・・・・・・・・・
私は “アナザーヘブン”のまなぶ を演じているのか?
“菜緒子の部屋に行かなければならない”
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
家に着くと妻が出迎えた。
『お帰り。ねぇ、あなた何か隠してるでしょ?』
『なにを?』
『とぼけちゃって・・』
・・・・・・・菜緒子のことは話せない。
『会社は大変だよ。計画実行のためになぁ・・』
『そうじゃなくて。あれ。』
妻はリビングに置かれた小包を指さして言った。
『私の誕生日プレゼント?』
『違うよ』
かわいい花柄の小包はプレゼントと間違ってもおかしくない。
私は慎重に小包を開けた。
ほのかな甘い香り。・・・・・・・・・そう菜緒子の香り・・・・・・・
“悪魔の戯れ” ・・・・でもこれは・・・・・・
映画のように、もしかしたら菜緒子は悪魔で、感染しているのか?
私は言い知れぬ恐怖を感じながら、家路についた。
結局あの男と話すことはできなかったが、刑事に聞いた話でなんとなく全体像がわかった。
わかったと言っても、民事再生と会社とサイト・白井部長の関係だけで、
私に起こっている出来事との関係はわかっていない。(会社のことだから関係ないわけではないのだが・・・)
民事再生申請する事でサイトと縁を切ろうとしたんだろう。
裏金がたまに会社に来ていた政治家との関係に使われていたに違いない。・・・よくある話だ・・・・
ただ、わからないのはその事と菜緒子の関係。
私の行く先には必ず菜緒子の陰がある。・・・・・菜緒子に操られているのか・・・・・・・・
そしてまた、私の行くところにあの刑事がいる。
これもどう言うことなのか?・・・・・偶然?それとも・・・・・・・・
道行くひと(全くの他人)のあの視線。そして“にやり”とする表情
白井恵美はなぜ“菜緒子”を恐れていたのか?
部長が知っている“菜緒子”は誰なのか?・・・・・・・・悪魔?・・・・・・・・・
私は “アナザーヘブン”のまなぶ を演じているのか?
“菜緒子の部屋に行かなければならない”
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
家に着くと妻が出迎えた。
『お帰り。ねぇ、あなた何か隠してるでしょ?』
『なにを?』
『とぼけちゃって・・』
・・・・・・・菜緒子のことは話せない。
『会社は大変だよ。計画実行のためになぁ・・』
『そうじゃなくて。あれ。』
妻はリビングに置かれた小包を指さして言った。
『私の誕生日プレゼント?』
『違うよ』
かわいい花柄の小包はプレゼントと間違ってもおかしくない。
私は慎重に小包を開けた。
ほのかな甘い香り。・・・・・・・・・そう菜緒子の香り・・・・・・・
Posted by タンクん at
07:12
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2015年06月23日
ペネトレイト・・・7
急に手が震え出した。
中には茶色の手帳があった。
手帳を開くと“相原真”の文字が飛び込んできた。
菜緒子の手帳に間違いない。・・・・・・・でもなぜ?誰が?・・・・・・・
この手帳は警察にあったはず。あの刑事に間違いない。
彼はなぜこれを私に送りつけてきたのか?
手帳をめくると写真が落ちた。
その写真に写っていたのは・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私はまた奇声をあげ、震える手から写真がこぼれた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
会社を休み菜緒子の部屋に急いでいる。
昨日は眠れなかった。
写真を見た私が嘔吐するのを妻は黙って見ていた。・・・・背後でそう感じた・・・・
あの“にやり”と同じ感覚。私は便器に突っ込んだ頭をしばらく出せずにいた。・・・・振り向けない・・・・
ようやく妻の気配が無くなったのを確認し、食事もせずそそくさと自分の部屋に閉じこもった。
・・・・・・・・あの手帳をもって・・・・・・・
写真には私の父が写っていた、傍らで菜緒子が微笑んでいる。
もう一枚には、中学生(白井部長の面影)とのツーショット。 菜緒子だ。
・・・・・・・・・菜緒子は時代を超えて生きている。・・・・・・・・
手帳には何人もの名前があった。細かい情報とともに・・・
それも有名人ばかり。
政治家・弁護士・芸能人・暴力団・外国人の名前もある。
年齢もさまざま。歴史教科書に出てくるような古い人まで・・・・・
記述の内容はまさに個人情報。
明らかに関係がないと判らない情報が多い。
やはり菜緒子は人間ではない。
いったい菜緒子の目的はなんなのか?
私は有名人ではない。菜緒子がなぜ私に興味を持ったのか? ・・・・・目的は?・・・・
全ての鍵は菜緒子の部屋にある。
・・・・どうしても行かなくては・・・・
中には茶色の手帳があった。
手帳を開くと“相原真”の文字が飛び込んできた。
菜緒子の手帳に間違いない。・・・・・・・でもなぜ?誰が?・・・・・・・
この手帳は警察にあったはず。あの刑事に間違いない。
彼はなぜこれを私に送りつけてきたのか?
手帳をめくると写真が落ちた。
その写真に写っていたのは・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私はまた奇声をあげ、震える手から写真がこぼれた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
会社を休み菜緒子の部屋に急いでいる。
昨日は眠れなかった。
写真を見た私が嘔吐するのを妻は黙って見ていた。・・・・背後でそう感じた・・・・
あの“にやり”と同じ感覚。私は便器に突っ込んだ頭をしばらく出せずにいた。・・・・振り向けない・・・・
ようやく妻の気配が無くなったのを確認し、食事もせずそそくさと自分の部屋に閉じこもった。
・・・・・・・・あの手帳をもって・・・・・・・
写真には私の父が写っていた、傍らで菜緒子が微笑んでいる。
もう一枚には、中学生(白井部長の面影)とのツーショット。 菜緒子だ。
・・・・・・・・・菜緒子は時代を超えて生きている。・・・・・・・・
手帳には何人もの名前があった。細かい情報とともに・・・
それも有名人ばかり。
政治家・弁護士・芸能人・暴力団・外国人の名前もある。
年齢もさまざま。歴史教科書に出てくるような古い人まで・・・・・
記述の内容はまさに個人情報。
明らかに関係がないと判らない情報が多い。
やはり菜緒子は人間ではない。
いったい菜緒子の目的はなんなのか?
私は有名人ではない。菜緒子がなぜ私に興味を持ったのか? ・・・・・目的は?・・・・
全ての鍵は菜緒子の部屋にある。
・・・・どうしても行かなくては・・・・
Posted by タンクん at
11:12
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2015年06月23日
アイソレイト・・・1
・・・“菜緒子の部屋”・・・
あの刑事の話から、うる覚えの住所をたどっている。・・・・・・・
“たしかこのマンションの3階 302号だった”
ふつうのマンション。ひとり暮らしのはず。ここの住人は死んでいる?はず。・・・
おそるおそるノブを回した。・・・・・・・・やはり開いている・・・・・・・・・
もし、菜緒子が私を導いているのなら、扉は開いているだろうと思っていた。
・・・・・・・・そう、私は導かれている・・・・・・・・・
中に入るとあの甘い香りが鼻を突いた。・・・・・・・・今ではなんとも不気味な香り・・・・・・・・
『誰かいますか?いませんよね』・・・・・・居るはずはない・・・・・・
部屋の中は “ガラン” として、まるで生活観など全くない。
古びた木のテーブルがポツンと中央に横たわっている。
椅子が2つ。向かい合わせに。
私は椅子に座ってみた。
壁にある比較的大きな鏡に私がうつっている。
ふと “2001年宇宙の旅” を思い出した。
鏡にうつった自分の姿を見ているうちにあることに気づいた。
・・・・・“私の唇の端が少し上がっている”・・・・・・・
今にもあの“にやり”を完結しそうな・・・・
・・・・・・・・・・突然、私の背後から女が出てきた。・・・・・・・・・・
・・・・ぬ~と・・・・・菜緒子は現れた。
『こんにちわ。待ってたわ。』
椅子から転げ落ちる。
『菜緒子。生きていたのか?』
『そうよ。私は死なない。』
『どう言うことだ?』・・・・・・・菜緒子の服はあの時と同じ・・・・・・・
『私は見えない。・・でも見てほしい。』
『君が私をここに連れてきたのか?』
『えぇ。簡単なこと。私は自由に誰にでもなれるから。』
・・・・誰にでもなれるとは?・・・・
あの刑事の話から、うる覚えの住所をたどっている。・・・・・・・
“たしかこのマンションの3階 302号だった”
ふつうのマンション。ひとり暮らしのはず。ここの住人は死んでいる?はず。・・・
おそるおそるノブを回した。・・・・・・・・やはり開いている・・・・・・・・・
もし、菜緒子が私を導いているのなら、扉は開いているだろうと思っていた。
・・・・・・・・そう、私は導かれている・・・・・・・・・
中に入るとあの甘い香りが鼻を突いた。・・・・・・・・今ではなんとも不気味な香り・・・・・・・・
『誰かいますか?いませんよね』・・・・・・居るはずはない・・・・・・
部屋の中は “ガラン” として、まるで生活観など全くない。
古びた木のテーブルがポツンと中央に横たわっている。
椅子が2つ。向かい合わせに。
私は椅子に座ってみた。
壁にある比較的大きな鏡に私がうつっている。
ふと “2001年宇宙の旅” を思い出した。
鏡にうつった自分の姿を見ているうちにあることに気づいた。
・・・・・“私の唇の端が少し上がっている”・・・・・・・
今にもあの“にやり”を完結しそうな・・・・
・・・・・・・・・・突然、私の背後から女が出てきた。・・・・・・・・・・
・・・・ぬ~と・・・・・菜緒子は現れた。
『こんにちわ。待ってたわ。』
椅子から転げ落ちる。
『菜緒子。生きていたのか?』
『そうよ。私は死なない。』
『どう言うことだ?』・・・・・・・菜緒子の服はあの時と同じ・・・・・・・
『私は見えない。・・でも見てほしい。』
『君が私をここに連れてきたのか?』
『えぇ。簡単なこと。私は自由に誰にでもなれるから。』
・・・・誰にでもなれるとは?・・・・
Posted by タンクん at
21:28
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2015年06月25日
アイソレイト・・・2
『君は誰だ?』
『あなたよ。ず~と一緒に生きてきたわ。』
『な。なんだと。』
『私はあなたの意識の中に生きて来た。も~長いこと。私はあなたと共に生きてきた。
これからもずっと。』
『意識の中とはどう言うことだ?』
『私の生きる場所は、あなた達人間の脳裏。 “まこと” あなたは感じていたはずよ。
時に自分ではコントロールできない衝動にかられることはない?』
・・・・・・・誰にでもある。・・・・・・・・
『あなた達が苦しかったり、楽しかったり、時に今まで想像もできない行動を起こす時に、私は現れる。
人間が心の問題と考える事は全て私たちの行動の成果。』
・・・・・・菜緒子は私の中にいるのか?・・・・・・
『人は理性で善し悪しを区別する。でもそんなつまらない事はないわ。私はちょっと手助けをしてるのよ。』
『人は全ての行動に理由をつけたがるけど、理屈じゃなく、ふと行動する事に“喜び”を感じるでしょ。』
『頭で理解できないほどの“喜び”。それはどんな時でも、どんな場所でもあるわ。』
『私たちは人に“喜び”を与えているの。』
・・・確かにどうしようもなく行動してしまう事はある“衝動”・・・・
・・・自分の中にもう1人の自分を感じることがある・・・・・・・・それが“菜緒子”?・・・・・・・・
『もうひとりの私と言うことか?』
『そうとも言えるわね。』
『私達は人の意識の及ばないところに生きてきた。時に人の間を行き来したわ。』
・・・・・・・・あの“にやり”・・・・・・・
心地よい菜緒子の声を聞きながら私は眠ってしまった。
“喜び” とも “恐怖” ともつかない “心地よさ”
私は菜緒子との出会いからこれまでのことを感じながら深い眠りについていった。
Posted by タンクん at
07:42
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2015年06月25日
アイソレイト・・・3
眠りから覚めると、外は暗くなっていた。
開けられた窓から冷たい風が白いカーテンを揺らしている。
“どれくらい寝ていたのか”
私の脳裏に残る菜緒子の表情を思い出していた。
夢とも現実とも判らない感覚。
椅子に座りまた鏡を覗いてみた。
窓の外からネオンの灯が見える。
私の頭は殴られたように重い。
菜緒子の話が真実としても、なぜ私を導いたのか?
私は甘い香りを身にまとい、部屋をでた。
“紀美子も菜緒子になる瞬間があったのか?”
私の知らないところで・・・・・・・・
ネオン街を横切りながら、どうしようもなく悲しくなる自分を感じていた。
通りの人込みを眺め、こちらを見ている人を見つける。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今まで気づかなかったが、どこにいても、普通に歩いていても、“誰かに見られている”感覚を覚えることがあった。
・・・・・・・・・・・・それが普通・日常・・・・・・・・・・・・・・・
“目が合う” ことなどしょっちゅうある。
その時、何かを共有しているのだ。・・・・・・・・何を・・・・・・・・
菜緒子は私をなぜ導いたのか?
その答えがこの“日常の監視”にあるのではないか?
私が考えながら歩いていると・・・
・・・・『相原さん、相原さん』・・・・・・・男の声
あの刑事が声を掛けてきた。
『おい。お前知ってんだろ?教えろよ』
『菜緒子は、菜緒子はなんなんだ?』
むなぐらをつかみ、攻め寄った。
『離して下さいよ』・・・・・・・搾り出すような声
わたしは刑事に攻め寄っている。刑事に・・・・・・
『その顔ですよ』
『何のことだ』
『今、あなた笑ったでしょ・・・にやりと』
・・・私が笑っていた・・・
『私も気づかなかったんですが・・・時折そういう顔するらしいんです。』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・菜緒子が乗移っているのか・・・・・・・・・・・
開けられた窓から冷たい風が白いカーテンを揺らしている。
“どれくらい寝ていたのか”
私の脳裏に残る菜緒子の表情を思い出していた。
夢とも現実とも判らない感覚。
椅子に座りまた鏡を覗いてみた。
窓の外からネオンの灯が見える。
私の頭は殴られたように重い。
菜緒子の話が真実としても、なぜ私を導いたのか?
私は甘い香りを身にまとい、部屋をでた。
“紀美子も菜緒子になる瞬間があったのか?”
私の知らないところで・・・・・・・・
ネオン街を横切りながら、どうしようもなく悲しくなる自分を感じていた。
通りの人込みを眺め、こちらを見ている人を見つける。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今まで気づかなかったが、どこにいても、普通に歩いていても、“誰かに見られている”感覚を覚えることがあった。
・・・・・・・・・・・・それが普通・日常・・・・・・・・・・・・・・・
“目が合う” ことなどしょっちゅうある。
その時、何かを共有しているのだ。・・・・・・・・何を・・・・・・・・
菜緒子は私をなぜ導いたのか?
その答えがこの“日常の監視”にあるのではないか?
私が考えながら歩いていると・・・
・・・・『相原さん、相原さん』・・・・・・・男の声
あの刑事が声を掛けてきた。
『おい。お前知ってんだろ?教えろよ』
『菜緒子は、菜緒子はなんなんだ?』
むなぐらをつかみ、攻め寄った。
『離して下さいよ』・・・・・・・搾り出すような声
わたしは刑事に攻め寄っている。刑事に・・・・・・
『その顔ですよ』
『何のことだ』
『今、あなた笑ったでしょ・・・にやりと』
・・・私が笑っていた・・・
『私も気づかなかったんですが・・・時折そういう顔するらしいんです。』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・菜緒子が乗移っているのか・・・・・・・・・・・
Posted by タンクん at
16:56
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2015年06月26日
アイソレイト・・・4
『相原さん。私も菜緒子を探しているんです。』
『多分探しながら、あなたを見張っていた。いや、導いていたのかも。』
『導くだと?何処に』
『さぁ。わかりません。・・・・菜緒子にしか』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人は日常ではない一瞬、“にやり”という表情をする。
“やった”とか“しめた”とか、いつもと違う出来事を期待した時。
人は、心の奥底で日常はつまらないと思っている。
そして、非日常を期待している。
それが現実になる瞬間、“にやり”とスイッチを入れる。
そういえばいろんな場面で“にやり”を見てきたような気がする。
それが良い事でも、悪い事でも関係なく、非日常と言う意味では同じ。
菜緒子はそのスイッチを入れている。
脳裏と共に生きて・・・・・
だから、時代を超えて生きられる。
それにしても、私になぜそれを教えたかったのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『どうすれば菜緒子に会える?教えろ』
『私にも分りません。ただ・・』
『ただ何だ?』
『ただ、普通じゃない事をすれば、会えるのでは・・・』
・・・・・・そう、菜緒子が私の中にいるなら、出せばいい・・・・・
・・・普通じゃない事をして・・・・・・・・
私の目の前にはナイフがある。
鏡にナイフを持った自分を映してみる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どうしても菜緒子に会いたい。
話がしたい。
疑問を解きたい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『多分探しながら、あなたを見張っていた。いや、導いていたのかも。』
『導くだと?何処に』
『さぁ。わかりません。・・・・菜緒子にしか』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人は日常ではない一瞬、“にやり”という表情をする。
“やった”とか“しめた”とか、いつもと違う出来事を期待した時。
人は、心の奥底で日常はつまらないと思っている。
そして、非日常を期待している。
それが現実になる瞬間、“にやり”とスイッチを入れる。
そういえばいろんな場面で“にやり”を見てきたような気がする。
それが良い事でも、悪い事でも関係なく、非日常と言う意味では同じ。
菜緒子はそのスイッチを入れている。
脳裏と共に生きて・・・・・
だから、時代を超えて生きられる。
それにしても、私になぜそれを教えたかったのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『どうすれば菜緒子に会える?教えろ』
『私にも分りません。ただ・・』
『ただ何だ?』
『ただ、普通じゃない事をすれば、会えるのでは・・・』
・・・・・・そう、菜緒子が私の中にいるなら、出せばいい・・・・・
・・・普通じゃない事をして・・・・・・・・
私の目の前にはナイフがある。
鏡にナイフを持った自分を映してみる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どうしても菜緒子に会いたい。
話がしたい。
疑問を解きたい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Posted by タンクん at
07:21
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2015年06月26日
アイソレイト・・・5
紀美子が階段を上がってくる足音。
“紀美子 すまん”
寝室の扉は開いている。
『ね~。いつまで寝てるの?』
振り向く私の手にナイフを見つけ
『どうしたの?何してんの?』
私の顔を見た紀美子の表情はすぐに恐怖に変わっていった。
その変化をスローモーションのように感じ、そして味わっている自分。
“そう、これが非日常。これこそが・・・菜緒子出て来い”
じりじりと紀美子に迫り寄る。
そして一気に切りつけた。
紀美子の悲鳴がこれほど心地よく感じられたのは何時以来だろう。
逃げまどう紀美子をすこしづつ追い詰めるこの快感。
たぶん私は“にやり”としている。
台所の片隅に潜んだ紀美子を見つけだし、最後の留めを・・・
振り上げた右手の背後で菜緒子の声がした。
『ふふふ。楽しそう。』
『菜緒子 会いたかった』
『あら。いつも一緒にいるのに。まことが気づかないだけよ』
いつの間にか紀美子は居なくなっている。
私は菜緒子に聞かなければ。
『教えてくれ。なぜ私の前に現れた?』
『だから、いつも一緒にいるのよ。』
『それに、まことの考えはもう知ってるわ。非日常のこと。だいたい当たってるわね。』
『でも違ってる』
『なにが、おまえは私にこんな事をさせて喜んでるじゃないか。目的はなんだ。』
『それが、違うの。喜んでるのはあなたなのよ“まこと”』
・・・・・・・・・・・・・・わたしは・・・・・・・・・・・・・・
“紀美子 すまん”
寝室の扉は開いている。
『ね~。いつまで寝てるの?』
振り向く私の手にナイフを見つけ
『どうしたの?何してんの?』
私の顔を見た紀美子の表情はすぐに恐怖に変わっていった。
その変化をスローモーションのように感じ、そして味わっている自分。
“そう、これが非日常。これこそが・・・菜緒子出て来い”
じりじりと紀美子に迫り寄る。
そして一気に切りつけた。
紀美子の悲鳴がこれほど心地よく感じられたのは何時以来だろう。
逃げまどう紀美子をすこしづつ追い詰めるこの快感。
たぶん私は“にやり”としている。
台所の片隅に潜んだ紀美子を見つけだし、最後の留めを・・・
振り上げた右手の背後で菜緒子の声がした。
『ふふふ。楽しそう。』
『菜緒子 会いたかった』
『あら。いつも一緒にいるのに。まことが気づかないだけよ』
いつの間にか紀美子は居なくなっている。
私は菜緒子に聞かなければ。
『教えてくれ。なぜ私の前に現れた?』
『だから、いつも一緒にいるのよ。』
『それに、まことの考えはもう知ってるわ。非日常のこと。だいたい当たってるわね。』
『でも違ってる』
『なにが、おまえは私にこんな事をさせて喜んでるじゃないか。目的はなんだ。』
『それが、違うの。喜んでるのはあなたなのよ“まこと”』
・・・・・・・・・・・・・・わたしは・・・・・・・・・・・・・・
Posted by タンクん at
12:36
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2015年06月26日
アイソレイト・・・6
わたしは喜んでいる。
この非日常の出来事を。
そう。わたしには理解できてしまった。
菜緒子は私の、いや我々人間の欲望なのだ。
欲望が実体化した姿。だから楽しむときに現れる。
そう、楽しむときだけに・・・・
いつも脳裏に住み着いていると言う表現も理解できた。
菜緒子はただ楽しがっている。
目的なんてない。楽しければ・・・・・
楽しさの表現は人それぞれ・・・
それがSEXであろうと、犯罪であろうと、スポーツにおける勝利であったり、
労働であったり、自己実現であったり・・・・
最も現れやすい事が、非日常の出来事の場合。
その一瞬。人はなんとも言い様のない快感を感じるものだ。
私には理解できた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
道行く人が私をみている。
目が合った瞬間“にやり”とする。
彼の中の菜緒子が私に期待しているのだ。
いや、私の菜緒子が彼を動かしているのかもしれない。
そうやって我々は日々快感を求めている。
菜緒子は私に“もっと楽しめ”と言いに来たのだ。
民事再生も楽しみの対象だったのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・私はそれから・・・・・・・・・・
この非日常の出来事を。
そう。わたしには理解できてしまった。
菜緒子は私の、いや我々人間の欲望なのだ。
欲望が実体化した姿。だから楽しむときに現れる。
そう、楽しむときだけに・・・・
いつも脳裏に住み着いていると言う表現も理解できた。
菜緒子はただ楽しがっている。
目的なんてない。楽しければ・・・・・
楽しさの表現は人それぞれ・・・
それがSEXであろうと、犯罪であろうと、スポーツにおける勝利であったり、
労働であったり、自己実現であったり・・・・
最も現れやすい事が、非日常の出来事の場合。
その一瞬。人はなんとも言い様のない快感を感じるものだ。
私には理解できた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
道行く人が私をみている。
目が合った瞬間“にやり”とする。
彼の中の菜緒子が私に期待しているのだ。
いや、私の菜緒子が彼を動かしているのかもしれない。
そうやって我々は日々快感を求めている。
菜緒子は私に“もっと楽しめ”と言いに来たのだ。
民事再生も楽しみの対象だったのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・私はそれから・・・・・・・・・・
Posted by タンクん at
19:25
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2015年06月28日
アイソレイト・・・7
すべてを理解してしまった私の暮らしはこれまでとは違い、実に楽しい。
時に非日常の出来事を生み出すことを意図的に行っている。
雑踏のなかで、また病院内で、目の合った人が私に微笑みかけるのを心待ちするようになった。
それどころか、わざとこの事に気づかせようと企んだりもしている。
猟奇的殺人者など、精神異常と判断される者は、この事に気づいてしまったのだろう。
そして、奥底では、私たちも楽しんでいるのだ。
私は菜緒子にはなれないが、伝道者にはなれそうだ。
全ての人がこの事に気づくとき、人間社会は根底から変わってしまうだろう。
それでも、私は伝道者として、このあやうい時間(現在)を楽しみながら生きつづける。
そして、多くの同胞を見つけ続け、悦びを分かち合うのだ。
なんとすばらしい人生ではないか。
・・・・・・・・・・・全て菜緒子のお陰である。
時に非日常の出来事を生み出すことを意図的に行っている。
雑踏のなかで、また病院内で、目の合った人が私に微笑みかけるのを心待ちするようになった。
それどころか、わざとこの事に気づかせようと企んだりもしている。
猟奇的殺人者など、精神異常と判断される者は、この事に気づいてしまったのだろう。
そして、奥底では、私たちも楽しんでいるのだ。
私は菜緒子にはなれないが、伝道者にはなれそうだ。
全ての人がこの事に気づくとき、人間社会は根底から変わってしまうだろう。
それでも、私は伝道者として、このあやうい時間(現在)を楽しみながら生きつづける。
そして、多くの同胞を見つけ続け、悦びを分かち合うのだ。
なんとすばらしい人生ではないか。
・・・・・・・・・・・全て菜緒子のお陰である。
Posted by タンクん at
06:28
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2015年06月28日
キャンセレイション
私は人生を楽しんでいる。・・・・今までとは違った意味で・・・・・・・・・
今日もいつもの日々を送っている。・・・・・表面上は・・・・・・・・
『あなた、起きて。遅れるわよ。』
妻の声が階段の下から聞こえる。朝ご飯の香りとともに。
・・・菜緒子・・・
私の日々が楽しい物に変わるきっかけを与えてくれた事に感謝します。
私は伝道者として、日々過ごしていきます。
“生きると言うことは、楽しむこと”
私は小さな出来事の中の非日常を意図的に創造し、楽しんでいきます。
『早く、食べてね』
『子供は?』
『二人とも早く出たわよ。部活よ。』
・・・・・今では、たまに見せる子供たちのあの表情が愛おしくてたまらない・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
会社は再出発のためのプロジェクトを立ち上げようとしていた。
私はその事さえ楽しんでいる。
忙しく働きながら、どこか余裕をもっていられるのも全て・・・・
・・・・・・・・・菜緒子のおかげ・・・・・・・・・・・・・
久しぶりの早い退社。
門を出るとすぐに携帯が鳴った。
『待っていたわ。』
・・・・・菜緒子・・・・・・・・
菜緒子には実態がない。
このメールは誰からだろう? ・・・・私の中・・・・・
『いつものところで・・・』
そして、私ははじめて会った駅前の中華店に急いだ。
今日もいつもの日々を送っている。・・・・・表面上は・・・・・・・・
『あなた、起きて。遅れるわよ。』
妻の声が階段の下から聞こえる。朝ご飯の香りとともに。
・・・菜緒子・・・
私の日々が楽しい物に変わるきっかけを与えてくれた事に感謝します。
私は伝道者として、日々過ごしていきます。
“生きると言うことは、楽しむこと”
私は小さな出来事の中の非日常を意図的に創造し、楽しんでいきます。
『早く、食べてね』
『子供は?』
『二人とも早く出たわよ。部活よ。』
・・・・・今では、たまに見せる子供たちのあの表情が愛おしくてたまらない・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
会社は再出発のためのプロジェクトを立ち上げようとしていた。
私はその事さえ楽しんでいる。
忙しく働きながら、どこか余裕をもっていられるのも全て・・・・
・・・・・・・・・菜緒子のおかげ・・・・・・・・・・・・・
久しぶりの早い退社。
門を出るとすぐに携帯が鳴った。
『待っていたわ。』
・・・・・菜緒子・・・・・・・・
菜緒子には実態がない。
このメールは誰からだろう? ・・・・私の中・・・・・
『いつものところで・・・』
そして、私ははじめて会った駅前の中華店に急いだ。
Posted by タンクん at
17:22
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