2015年06月18日
エボルブ・・・6
『相原さん。お客さんですよ。・・警察だって・・・』
総務の小島くんが耳打ちした。
その二人(ドラマの刑事風ではない)を連れて門の前に行った。
『警察です。少しお伺いしたい事がありまして。』
『何でしょう』
『この人を知ってますか?』
刑事は顔だけがやけに白い写真を出した。
・・・菜緒子の顔・・・ 昨日の菜緒子ではない。
『いっ、いいえ。』
『おかしいですね。被害者の手帳からあなたの名前が出てきたんですが・・』
『それも、何度も。・・・あなた会ってますよね』『その日』
『どんな関係ですか?』
若い刑事(佐賀出身の新人らしい)はちょっと人を馬鹿にしたような言い方で矢継ぎ早に聞いてきた。
『愛人ですか?』
『い、いや、そんな』
私はうそが下手だ。昔からオフェンスはいいが、ディフェンスはだめだった。
正直に話した方が良さそうだ。
出会い系で知り合ったこと。
その日が2回目のデートであったこと。
車にはねられたみたいだった事。
・・・昨日の菜緒子の事は話していない・・・・
『手帳にはあなたの事が詳しく書き込まれています。』
『住所、年齢、家族構成、カード番号、貯金の額まで、まぁこれは定かではないですが・・・
かなり親しかったようですね。』
『そんなはずはない。』
『ところで、ひき逃げ車が見つかりましてね。』
『面白い事に、ハンドルにあなたの指紋がありましたよ。』
『はぁ~!! ちょっ、ちょっと待って下さい。どう言うことですか?』
『だから、あなたがひき逃げしたって事ですよ。』
・・・全く何がなんだか・・・
総務の小島くんが耳打ちした。
その二人(ドラマの刑事風ではない)を連れて門の前に行った。
『警察です。少しお伺いしたい事がありまして。』
『何でしょう』
『この人を知ってますか?』
刑事は顔だけがやけに白い写真を出した。
・・・菜緒子の顔・・・ 昨日の菜緒子ではない。
『いっ、いいえ。』
『おかしいですね。被害者の手帳からあなたの名前が出てきたんですが・・』
『それも、何度も。・・・あなた会ってますよね』『その日』
『どんな関係ですか?』
若い刑事(佐賀出身の新人らしい)はちょっと人を馬鹿にしたような言い方で矢継ぎ早に聞いてきた。
『愛人ですか?』
『い、いや、そんな』
私はうそが下手だ。昔からオフェンスはいいが、ディフェンスはだめだった。
正直に話した方が良さそうだ。
出会い系で知り合ったこと。
その日が2回目のデートであったこと。
車にはねられたみたいだった事。
・・・昨日の菜緒子の事は話していない・・・・
『手帳にはあなたの事が詳しく書き込まれています。』
『住所、年齢、家族構成、カード番号、貯金の額まで、まぁこれは定かではないですが・・・
かなり親しかったようですね。』
『そんなはずはない。』
『ところで、ひき逃げ車が見つかりましてね。』
『面白い事に、ハンドルにあなたの指紋がありましたよ。』
『はぁ~!! ちょっ、ちょっと待って下さい。どう言うことですか?』
『だから、あなたがひき逃げしたって事ですよ。』
・・・全く何がなんだか・・・
Posted by タンクん at
07:25
│Comments(0)
2015年06月18日
エボルブ・・・7
『昨日の女はげろっちまったよ』
『全部ですか?』
『あぁ。ここの事もな。よっぽど責められたんだろ~な。ははは。
『大丈夫なんですか?』
『何も起こりゃしないよ。おっさんにも事情があんだろ。』
・・・・・・・・・・・・・・・・
警察に行く途中私は考えていた。昨日の菜緒子のことば。
・・・・“もっと楽しくなるよ”・・・・・
私の取り調べ中、時折見せる笑顔が私を動揺させた。
会話を楽しんでいる。
会話を楽しんでいるのか?
取り調べられているのに・・・・
本物(警察)ではないので、馬鹿にされていたのか・・・
泣いているのに、ふとした瞬間の微笑みが異様なまでの恐怖を感じさせた。
そしてあの言葉“もっと楽しくなるよ”
結局、菜緒子が頼まれてまで私に会う理由は解らなかった。
それでいて今、私は菜緒子の事で警察署に向かっている。
そう、本来会うべき人ではなかった人の事で・・・・
『全部ですか?』
『あぁ。ここの事もな。よっぽど責められたんだろ~な。ははは。
『大丈夫なんですか?』
『何も起こりゃしないよ。おっさんにも事情があんだろ。』
・・・・・・・・・・・・・・・・
警察に行く途中私は考えていた。昨日の菜緒子のことば。
・・・・“もっと楽しくなるよ”・・・・・
私の取り調べ中、時折見せる笑顔が私を動揺させた。
会話を楽しんでいる。
会話を楽しんでいるのか?
取り調べられているのに・・・・
本物(警察)ではないので、馬鹿にされていたのか・・・
泣いているのに、ふとした瞬間の微笑みが異様なまでの恐怖を感じさせた。
そしてあの言葉“もっと楽しくなるよ”
結局、菜緒子が頼まれてまで私に会う理由は解らなかった。
それでいて今、私は菜緒子の事で警察署に向かっている。
そう、本来会うべき人ではなかった人の事で・・・・
Posted by タンクん at
12:45
│Comments(0)
2015年06月18日
ペネトレイト・・・1
警察での取り調べはきつかった。
私にはアリバイがない。菜緒子と会っていたから・・・
私の指紋があるはずがない。
刑事は指紋のついたハンドルカバーを持ってきた。
私が運転していたという証拠らしい。
私には身に覚えがない。あるはずがない。・・・
執拗な取調べは拘留期間ぎりぎりまで行なわれた。
この状況証拠だけでは弱いらしい。(私は絶対認めない)
とりあえずの釈放。逃げるにしても行き場はない。
家へと歩きながら私はふと気づいた。
・・・あのハンドルカバーは紀美子(妻)が持っていた・・・
・・・菜緒子・・・刑事の話では宇佐に住む30歳。片桐菜緒子・・・ひとり暮らし・・・
普通偽名のはずなのにとは思ったが、菜緒子は違っていたようだ。
何のために私に近づいたのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
家に帰り、すぐにハンドルカバーの事を尋ねてみた。
『なぁ~。紀美子。いつか車のハンドルカバーを見せてくれたじゃないか。何処にある?』
『なに?カバー?』
『あぁ。茶色の・・・』
『そんなこと有ったっけ?』
『有っただろ。何処だ。』 ・・・・・・・・・・怒鳴ってしまった・・・・・・・・
『なに怒ってんのよ。 あれね。たしか・・・あぁあれ。 返したわよ。』
『返したって。誰に?』
『白井部長さん』 ・・・・・・・・・・白井?・・・・・・・・・・・・
紀美子は同じ会社で経理をしていた。その時の上司が白井。今の管理部長。
私は考え込んだ。“どう言う事だ” 部長が運転してた?轢いたのは偶然?
でも検出された指紋は私の物だけ。・・・・・・・・“どう言う事だ”・・・・・・・・・・・・・
妻の話では、車マニヤの私にそのカバーを見せてくれ(誰とは言わず)と頼まれて預かったとの事。
私の意見を聞きたかったらしい。もう一ヶ月も前の話だ。
確かに私は触って、何か言ったと思う。ただそれだけ・・・
翌日。なんとか確かめようといつもより早く会社に行くと、門の前で刑事が待っていた。
“用があるなら家に来ればいいのに” “逃げも隠れもしないよ”
近づきながら駐車している車を見ると、そこには “昨日の菜緒子” が座っていた。
私にはアリバイがない。菜緒子と会っていたから・・・
私の指紋があるはずがない。
刑事は指紋のついたハンドルカバーを持ってきた。
私が運転していたという証拠らしい。
私には身に覚えがない。あるはずがない。・・・
執拗な取調べは拘留期間ぎりぎりまで行なわれた。
この状況証拠だけでは弱いらしい。(私は絶対認めない)
とりあえずの釈放。逃げるにしても行き場はない。
家へと歩きながら私はふと気づいた。
・・・あのハンドルカバーは紀美子(妻)が持っていた・・・
・・・菜緒子・・・刑事の話では宇佐に住む30歳。片桐菜緒子・・・ひとり暮らし・・・
普通偽名のはずなのにとは思ったが、菜緒子は違っていたようだ。
何のために私に近づいたのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
家に帰り、すぐにハンドルカバーの事を尋ねてみた。
『なぁ~。紀美子。いつか車のハンドルカバーを見せてくれたじゃないか。何処にある?』
『なに?カバー?』
『あぁ。茶色の・・・』
『そんなこと有ったっけ?』
『有っただろ。何処だ。』 ・・・・・・・・・・怒鳴ってしまった・・・・・・・・
『なに怒ってんのよ。 あれね。たしか・・・あぁあれ。 返したわよ。』
『返したって。誰に?』
『白井部長さん』 ・・・・・・・・・・白井?・・・・・・・・・・・・
紀美子は同じ会社で経理をしていた。その時の上司が白井。今の管理部長。
私は考え込んだ。“どう言う事だ” 部長が運転してた?轢いたのは偶然?
でも検出された指紋は私の物だけ。・・・・・・・・“どう言う事だ”・・・・・・・・・・・・・
妻の話では、車マニヤの私にそのカバーを見せてくれ(誰とは言わず)と頼まれて預かったとの事。
私の意見を聞きたかったらしい。もう一ヶ月も前の話だ。
確かに私は触って、何か言ったと思う。ただそれだけ・・・
翌日。なんとか確かめようといつもより早く会社に行くと、門の前で刑事が待っていた。
“用があるなら家に来ればいいのに” “逃げも隠れもしないよ”
近づきながら駐車している車を見ると、そこには “昨日の菜緒子” が座っていた。
Posted by タンクん at
18:58
│Comments(0)