中小企業で頑張る“タンクん”に明日はあるのか?

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2015年06月17日

エボルブ・・・3

・・・・菜緒子・・・・・

『先輩、なんで携帯使ってるんですか?』
『あぁこれか? 客と親しくなったんでな。』
『PCだと全員にいっせいに返事ができるから、集客にはいいって言ってたじゃないですか?』
『これって客にはこの携帯を使うのさ。“あなた専用よ”ってね』
『それで心を鷲づかみってことですね』
『この方法でいちころよ。』
『あれ?“あずさ2号”って止めたんじゃなかったですか?』
『それがしつこくってさ。会ってもいないのに“昨日は楽しかったね”とか返事が来るんだぜ。
 それでこのおっさんに興味が湧いちゃってさ。』
『変な人ですねぇ。大丈夫なんですか? まさか警察だとか?』
『そんなわけね~よ。』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

送られて来た菜緒子のアドレスは確かに以前のものと同じだった。
同じだったと思う。
あの日、菜緒子との関係を葬り去る為、全てを消去していた。
食堂で奇声を上げてから2日が経っていた。ひとまず落ち着いている。

社員は私の奇声の本当の意味をしらない。
自分の生活・将来設計・会社・・・・ではない。

『相原くん。君はどうする気だい?』
『えっ! 何をですか?』
『会社の事だよ? 決まってるだろ。』
『は~。はい』
『全く君はのんきでいいよ。私はつらいよ・・』

白井部長はどっちの立場にするか悩んでいたようだが、私の頭からメールの事が離れず・・・ここ2日眠れずにいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『どうしたのかな?返事は?メルアド届いてない?』

死んだはずの菜緒子からのメール。
震える手で返事を出した。
  


Posted by タンクん at 07:19Comments(0)

2015年06月17日

エボルブ・・・4

『会えるのか?』
『えぇ。もちろんよ。』

『おい。相原。どうしたんだ。聞いてんのか?』
『だから、これから月1千万返済していくんだって? できるのか?』

『なんとかできると思う。出来なかったらそれまでさ。』

『ほんとかぁ~。給料カットにボーナス無しだろ。』
『元気でないよなぁ』

彼の言うのも最もだった。
この時期みんな生活がかかっている。少しでも給料のいい所があれば、転職を考えるのは当然。
他人事じゃない。

『私。パートに出ようか?』
出がけの妻の一言が心につき刺さった。

社員の進路相談(ぐちの聞き役)・会社への要求・上司からの命令
まさに“あぁ~中間管理職”って感じだ。

それにしても問題は今日の密会。菜緒子は来るのだろうか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夕暮れ
太陽がやけに赤く、長く伸びた人影から、ふと“エルム街の悪夢”にはじめて登場するフレディーの影を思い出した。
やけに喉が渇く。
・・・・・・・・最初に会った駅北口の中華店前で待っている。・・・・

寒さではなく、小刻みに手が震えている。
“菜緒子は生きていたんだ。いや、でも怪我は大丈夫なのか?
 まだ、3っ日しか経っていない。ほんとに菜緒子なのか?”

赤い黄昏の光を背に、黒のタクシーから女が降りてきた。
グレーの毛皮 白いミニスカート 長い髪

いでたちは菜緒子に似ている。
  


Posted by タンクん at 13:58Comments(0)

2015年06月17日

エボルブ・・・5

菜緒子か? いや違う。明らかに別人である。

『お待たせ。“あずさ2号”さん』

私は今度は“まこと”などと本名を言うのはよそうと思った。
そして、どうしてもこの真相が知りたくなった。

・・・ほんとうの菜緒子は誰なのか?・・・・

『ねぇ。私とHするんでしょ。』
『その前に聞きたい事があるんだ。』
『なによ。早くしてよ』

手馴れた菜緒子はホテルに入るとすぐにシャワーを浴びている。
商売の臭いがプンプンする。・・・素人じゃない・・・
そうと来れば聞きたいことはひとつ。
私の態度の急変を感じて、菜緒子は尻込みをした。

『どう言う事だ!。なぜ俺と会う?』
出会い系なのに“どうして会う?”とは変な話だ。

・・・・・・・・・・・・・・ 一時間はかかっただろうか。

時折大声を出し、泣き出す菜緒子をなだめ、本場の刑事のように真相を探っていく。
途中言い知れぬ快感をも覚えた。
菜緒子は知り合いから頼まれたようだ。
“あずさ2号”(そう私だ)と1回デートすれば、2万円貰えるらしい。
デートの内容は成り行き。そこで稼ぐ子も多いらしい。いやなら帰ればいい。
会うだけで2万円もらえるなら、いいバイトである。
ただ、そいつらには何のメリットがあるのだろう?
・・・・・いかがわしい男を巧みに携帯で誘い、女に会わせる。

『知らないわよ。ただ行けって言われただけよ。』
私はそいつらの連絡先を聞きだした。どうしても、からくりを知りたくなった。
それにしても昨日車に轢かれた菜緒子は、いったい誰なのだろう。
今日そいつらがよこした菜緒子は、本来私が会うべき人。

・・・私は誰と会っていたのだろう。
  


Posted by タンクん at 16:59Comments(0)