エボルブ・・・5
菜緒子か? いや違う。明らかに別人である。
『お待たせ。“あずさ2号”さん』
私は今度は“まこと”などと本名を言うのはよそうと思った。
そして、どうしてもこの真相が知りたくなった。
・・・ほんとうの菜緒子は誰なのか?・・・・
『ねぇ。私とHするんでしょ。』
『その前に聞きたい事があるんだ。』
『なによ。早くしてよ』
手馴れた菜緒子はホテルに入るとすぐにシャワーを浴びている。
商売の臭いがプンプンする。・・・素人じゃない・・・
そうと来れば聞きたいことはひとつ。
私の態度の急変を感じて、菜緒子は尻込みをした。
『どう言う事だ!。なぜ俺と会う?』
出会い系なのに“どうして会う?”とは変な話だ。
・・・・・・・・・・・・・・ 一時間はかかっただろうか。
時折大声を出し、泣き出す菜緒子をなだめ、本場の刑事のように真相を探っていく。
途中言い知れぬ快感をも覚えた。
菜緒子は知り合いから頼まれたようだ。
“あずさ2号”(そう私だ)と1回デートすれば、2万円貰えるらしい。
デートの内容は成り行き。そこで稼ぐ子も多いらしい。いやなら帰ればいい。
会うだけで2万円もらえるなら、いいバイトである。
ただ、そいつらには何のメリットがあるのだろう?
・・・・・いかがわしい男を巧みに携帯で誘い、女に会わせる。
『知らないわよ。ただ行けって言われただけよ。』
私はそいつらの連絡先を聞きだした。どうしても、からくりを知りたくなった。
それにしても昨日車に轢かれた菜緒子は、いったい誰なのだろう。
今日そいつらがよこした菜緒子は、本来私が会うべき人。
・・・私は誰と会っていたのだろう。