エボルブ・・・2
私は走り出していた。とにかく遠くへ。
信じられない。つい先程まであんなに・・・
全身が震えていた。最後に会ったのが私なのか・・・
震える手を抑え、何事も無かったように家に帰った。
玄関の扉を開けたと同時にメールが来た。
“菜緒子” メールは菜緒子からだった。
私は困惑していた。
たぶん菜緒子が死ぬ前に出したメールが遅れて来たんだろう。
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『民事再生の計画は次の通り。まず債権者への返済額として年間約1億円
これは銀行貸し入れ金の約60億円の金利は免除してもらっています。
但し、再生後の返済をどのようにするかは協議中です。
次に固定費の削減 にあたり、人員30%削減、現状給料の10%削減を行な
います。
尚、退職金等に関しましては、従来の・・・・・』
発表する管理部部長 白井の手が震えていた。
従業員の反応は解っていた。ざわついた食堂が収まる事はなかった。
一従業員である私も同じ思い。
ただ中間管理職と言う立場のあやふやなことと言ったらどうしようもない。
それでも平然と会社側に意見を発してきた私は従業員の一員として皆に頼られていたと思う。
・・・・事件が明るみになるまでは・・・・
説明会は続いていた。
会社側の言い分もわからなくはないが、こっちも生活がかかっている。
口々に文句を言い出していた。
『やっぱり会いたい。直メのアドレス教えるね。』
胸ポケットから取り出した携帯画面を見て、私は飛び跳ねた。