ロジカル・・・5
北九州市・小倉
『また着てるよ、好きだね~』
『どうしたんですか?』
『ほら、また着てるよ。よほど会いたいんだね』
『そりゃそーでしょ。そうでなきゃ商売上がったりですよ』
『そうだよな。』
『そうやって男心をくすぐるのが僕たちの仕事ですから・・・』
『また来た。あずさ2号さん。こんどで4度目だよ。
断られても断られてもこうやって会いたいんだよな。』
『実在しないのに・・早くあきらめないかなぁ・・相手するのも疲れたよ』
『まぁまぁそう言わずに。僕らが儲かるためですよ・・・』
『あぁ。“じゃ~次の日曜日駅前でね”っと。』
中津駅前 北口 中華店前
”ここだよな。やっと会える。あきらめないでよかった”
”でもまたダメになるんじゃないだろ~な”
黒いタクシーから降り立った女、白のファーのジャケットに赤のミニ
”菜緒子に間違いない”
女はゆっくり歩いてきた。
『こ、こんにちわ。菜緒子さんですよね』
『あなたが“あずさ2号”さん?』
『はい。』
相原のニックネーム“あずさ2号”
ふたりは歩きだした。昔の様なにぎやかさはない。
不景気になって以来、繁華街に出歩くこともなくなっていた。
バブル期とはかなり変わっている。
目の当りにできた高揚感が私をじょう舌にしていた。
これまでのいきさつ・・と言うか、なぜ土壇場でダメになったのか?
私の口調はTVドラマの刑事のように
菜緒子の言葉の隅々をチェックし、一言も漏らさないように。
注意深く、確かめるように。
喫茶店から洒落たバーへ。
30歳には見えない、いやそれなりの色香の漂う女。